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心からの「ありがとうございました」を


昨日、お店の電話が鳴って、いつものように哲也が出ました。
「マスター、ちょっといいですか」と呼ばれ、受話器を僕に渡しながら、小さな声で僕の目を見ながら、「O角さんの奥さんです」。

“ああ、とうとうその日がきたか……”
正直、奥様からのじきじきの電話、という時点で僕は、ほぼ間違いなく「できれば聞きたくない報せだろう」と思いました。

奥様はとても丁寧に、しっかりと、僕の大好きだったO角さんの御逝去を伝えてくださりました。

連日たくさんのお友達が来られていたこと、もう話せなかったけど「◯◯さんが来てくださいましたよ」って伝えると、嬉しそうに微かに頷いておられたこと、最期は痛みもなく、穏やかに、安らかに旅立たれたこと……。
なんだかもう悲しくて悲しくて。
僕は奥様に、「先月、東京からの方も何人かいらして、ウチで10名以上の方たちがO角さんを囲まれて……。最期まで風景を可愛がってくださって……」
「マスターのところへお邪魔するのをいつもとても楽しみにしてました」

来月30周年を迎える風景の、開店来のお客様でした。
いつも口癖のように、「マスターが頑張ってるうちは僕も頑張らなあかん」とおっしゃっていて、また、「こうしていつでも気楽に来れる店がある、というのは有難いことや」と、本当に嬉しそうにおっしゃってくださってた。

12時からの明日のお葬式は、やはりどうしても列席させていただくことが出来ないから、今日、18時からのお通夜が始まる前に駆けつけました。
奥様とお嬢様お二人が、「マスター!」って駆け寄って来てくださり、受付にはいつものO角さんの素晴らしき仲間たち、O前さん、I村さん、Y崎さんのお顔が。

僕は、どうしてもO角さんに直接、お顔を見ながら、「ありがとうございました」が言いたかった。

この長きに渡り、ずっと僕に、哲也に、そして風景に、ずっと変わらぬ愛情をくださった。
もちろん僕らのような商売は、誰かの生活の中のほんのごくごく一部の存在です。
O角さんは、けれどずっと途絶えることなく、最期まで心の片隅にいつも置いてくださってた。
そのことに対して僕は、どうしても直接、心から「ありがとうございました」を伝えたかった。

とても穏やかなお顔のO角さんに、僕なりにちゃんと伝えることができました。

「マスターが頑張ってるうちは僕も頑張らなあかん」って言ってたじゃないですか、って、ほんの少し文句も言いました。

そのお人柄で、多くの素敵な仲間たちに囲まれて、とても嬉しそうにしていらした姿を忘れません。

O角さんの歴史は風景の歴史でもあります。

どうか安らかに眠ってください。
そして向こう岸でも、「しまったしまった島倉千代子、困った困ったこまどり姉妹」って、面白くもないギャグとばして、楽しく明るく過ごしてくださいね。

僕はO角さんのこと、大好きでした。
決して忘れることはありません。

合掌

風景 松田正弘
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